
目次
はじめに:粕漬け(かすづけ)とは
粕漬けとは、酒を絞った後に残る「酒粕(さけかす)」と呼ばれる発酵物に、魚や野菜などの食材を漬け込んで作る保存食であり、日本の伝統的な漬物(漬け物・漬物文化)のひとつです。酒造りと深く結びついた食品であり、日本の食文化の中で長く親しまれてきました。
酒粕は、蒸した米に麹菌(こうじ)や酵母などを加えて発酵させた「もろみ」を圧搾することにより、日本酒を造る過程で生まれる固形分です。白くてねっとりとした質感を持ち、米や麹の発酵の名残を感じさせる香りや様々な旨味が重なった、深く豊かな味わいがあり、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養も豊富に含んでいます。こうした酒粕の性質により、粕漬けには独特の風味と深い味わいが生まれるのです。
第1章:粕漬けの歴史と背景
粕漬けの起源はとても古く、日本の食文化の中で長い歴史を誇ります。
古い時代、日本酒がまだ粗い発酵酒だった頃、発酵の際に出る固形分がそのまま粕漬けに使われていたと考えられています。
また、律令制度の施行や宮中行事を記した文献『延喜式(えんぎしき)』には、宮廷や神社で使用される酒や食品が記されており、酒粕や漬物に関する記述も見られることから、平安時代の人々が酒粕を食品に活用していたことがうかがえます。酒粕を用いた漬物は、長い年月をかけて改良され、京都・奈良などを中心に食文化として定着しました。
江戸時代に入ると、日本全国で酒の生産と流通が飛躍的に増加し、粕漬けの文化も大きく発展しました。江戸や大阪、京都など都市部では酒蔵が増え、それに伴い大量の酒粕が安定的に手に入るようになりました。酒粕はそれ自体が保存性に優れており、また栄養価も高かったことから、庶民の間でも日常的に利用され始めました。
粕漬けは単なる保存食としてだけでなく、味に深みを与える調味料的な役割も担いました。例えば、野菜や魚を酒粕に漬け込むことで、風味が深まり、日持ちも良くなることから、家庭や屋台料理、旅人の携行食としても重宝されました。
また、江戸時代の記録には、地域ごとに独自の粕漬けの製法が確立されていたことが見受けられ、漬け込み時間や粕の調合、塩加減などに地域差があったことも知られています。
特に京都や奈良の「奈良漬(ならづけ)」が代表的な例で、酒粕の風味を活かした漬物文化が一層深まりました。
一方で、江戸をはじめとする大都市では、粕漬けが庶民の嗜好品として広がり、各地の特産品や土産物が流通するようになりました。粕漬けが単なる保存食から地域文化や経済活動の一部へと成長していったのです。
第2章:酒粕とは何か — 粕漬けの主役—

粕漬けの中心となる「酒粕」は、日本酒を仕込んだ後に残る発酵固形物で、コメのデンプンやタンパク質、酵母や麹菌が生成する芳香成分や旨味成分が豊富に含まれる発酵食品です。
酒粕はアルコールを含んでおり、一般には乾燥して固い「板粕(いたかす)」、比較的柔らかい「ばら粕(ばらかす)」、すでに練って柔らかくした「練り粕(ねりかす)」などの形状で流通します。これを塩や砂糖、味噌、みりんなどと混ぜ合わせて「粕床(かすどこ)」を作り、食材を漬け込んでいきます。
この酒粕に含まれるアミノ酸や酵素、ビタミン類などが、漬けられる食材にじっくり浸透し、独特の風味や旨味、保存性を与えるのです。
第3章:粕漬けの基本工程と流れ
粕漬けは、単純に食材を酒粕に漬ければ完成するわけではなく、いくつかのステップがあります。
1. 食材の下処理
多くの場合、魚や野菜は塩を振って余分な水分を抜きます。そうすることで酒粕の味がしっかり染み込みやすくなります。
2. 粕床の準備
酒粕に塩・砂糖・みりんなどを加え、適度な硬さと味になるように混ぜ合わせます。家庭や地域によって配合や風味は異なります。

3. 漬け込み
下処理した食材を粕床に漬け込みます。漬け込み期間は数日から数週間、あるいは何年にも及ぶことがあり、熟成が進むほど味は深くなります。

この間、酒粕に含まれる成分が食材の内部に移り、酵素の働きで味がまろやかになったり、旨味が引き出されたりします。
※上記は一般的な粕漬けについて述べたものであり、魚久における製造方法とは異なります。
第4章:粕漬けの種類とバリエーション
粕漬けには、漬ける食材や地域、漬け込み方法によって多くのバリエーションがあります。
1. 魚や肉の粕漬け
魚久のような粕漬け専門店では、銀だら(ぎんだら)や鮭、鯖などの魚の切り身を粕漬けにしたものが特に人気で、魚の臭みを消しながら旨味を引き出し、しっとりとした食感に仕上げています。魚の場合、魚の種類や部位に応じて漬け込み時間や酒粕の配合を調整することが多く、職人の技術や経験が味に影響します。 豚肉や鶏肉の粕漬けもあり、ワインや味噌と合わせた洋風・和風アレンジも見られます。
2. 野菜の粕漬け
粕漬けの代表的なものの一つが野菜の粕漬けで、特に瓜(うり)やきゅうり、大根、なす、冬瓜(とうがん)などがよく使われます。奈良地方の「奈良漬(ならづけ)」は、この粕漬けが発展した種類のひとつです。奈良漬は、最初に塩漬けしてから酒粕に漬け、その後何度も酒粕を取り替えて漬け込みを繰り返すことで長期熟成されます。これにより色が深い琥珀色になり、独特の風味となります。
3. その他のバリエーション
一部の家庭や地方では、粕漬けにからし(辛子)を加えた「辛子粕漬(からしづけ)」などもあります。これも酒粕の風味と辛子の刺激が混じり合い、独特の味わいとなります。豆腐やチーズを粕漬けにすることもあります。ねっとりもっちりとした食感やクリーミーな舌触り、マイルドな香りになるようです。
第5章:粕漬けの味と特徴
1. 粕漬けの味わいと香り
粕漬けは一般的に、まろやかで奥深い旨味、ほのかに酒粕の香りがするのが特徴です。酒粕由来のアミノ酸(グルタミン酸など)が食材に移ることで、うま味が強く感じられ、特に魚は生臭さが抑えられて食べやすくなります。 粕漬け独特の甘みやコクは、酒粕に加えられる砂糖やみりんの影響もあります。漬け込み期間が長いほどこれらの風味が深まり、色味も濃くなります。
2. 栄養価と健康面
酒粕にはタンパク質、食物繊維、ビタミンB群(B1・B2・B6や葉酸)やミネラルが豊富に含まれています。これらは体の代謝や健康維持に役立つほか、粕漬けとして食べることで栄養素を効率よく摂取することができます。 また、酒粕に含まれる酵素や発酵物質は腸内環境に良い影響を与える発酵食品としての価値もあります。
第6章:現代における粕漬け
現代でも日本全国で粕漬けは愛され続けており、家庭で作る人もいれば、専門店や料亭で提供されることもあります。料亭や老舗では季節や素材に合わせて漬け方を変えるなど、伝統と創意が組み合わさった技術が活きています。 魚久のように創業から長い歴史を持つ専門店では、伝統的な技術を守りながらも現代の食卓に合う味づくりを追求しています。
結び:受け継がれる、粕漬けの味わい
粕漬けとは、日本酒の製造過程で生まれる酒粕を利用して、魚や野菜などを漬け込んで作る日本古来の伝統的な漬物・保存食です。 その歴史は平安時代にまで遡り、江戸時代以降に全国へ広まりました。酒粕の豊かな旨味と栄養が食材に移り、まろやかで深い味わいを生み出すことから、今日でも日本の食文化として愛されています。
▶︎ 魚久オンラインショップのギフト・贈答品一覧はこちら
https://uokyu-onlineshop.jp/SHOP/174547/list.html
▶︎ 魚久の顔、銀だら粕漬けをチェックする
https://uokyu-onlineshop.jp/SHOP/PGIN.html


